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東洋医学的な夏の過ごし方(養生)

2026-07-31


本格的な暑さが続く現代の夏。外に出れば息苦しいほどの熱気に包まれ、室内に入ればエアコンの冷気で体が芯から冷えてしまう。そんな過酷な環境の中で、「なんとなく体がだるい」「食欲がわかない」「よく眠れない」といった不調(いわゆる夏バテ)を感じている方も多いのではないでしょうか。
東洋医学(中医学)には、季節の変化に合わせて暮らしや食事を整え、病気を未然に防ぐ「養生(ようじょう)」という考え方があります。約2,000年前に書かれた東洋医学の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』にも、夏の過ごし方についての知恵が詳しく記されています。
今回は、東洋医学の視点からみた夏のからだの状態と、健やかに秋を迎えるための「夏の養生法(食事・セルフケア・ツボ)」をたっぷりとご紹介します。

1. 東洋医学から見た「夏」のからだ

東洋医学では、自然界のあらゆるものを「木・火・土・金・水」の5つに分類する「五行学説(ごぎょうがくせつ)」という理論を用います。この中で、夏は「火」に属し、人間の五臓では「心(しん)」と深く結びついています。

「心」のオーバーヒートに注意

東洋医学における「心」は、単なる心臓という臓器だけでなく、血液の循環や、精神・意識などの「メンタル面」も司る司令塔です。
夏は一年で最も「陽気(熱)」が盛んになる季節。この熱である「暑邪(しょじゃ)」がからだに侵入すると、「心」がオーバーヒートを起こしやすくなります。その結果、動悸や息切れだけでなく、イライラする、気持ちが落ち着かない、不眠になるといったメンタルの不調が現れやすくなります。

汗のかきすぎは「気」を消耗する

東洋医学には「汗は心の液」という言葉があります。適度な発汗は体温調節に不可欠ですが、ダラダラと大量の汗をかきすぎると、水分(陰)と一緒にからだのエネルギーである「気」まで流れ出てしまい、激しい疲労感に襲われます。

日本の夏は「湿邪(しつじゃ)」との戦い

さらに、日本の夏は高温多湿です。このジメジメとした湿気は「湿邪」と呼ばれ、消化吸収を司る「脾(ひ)=胃腸」に大きなダメージを与えます。胃腸が弱ることで、食欲不振やからだの重だるさ、むくみ、軟便といったトラブルが引き起こされます。
 

2. 夏を乗り切る「食養生」(おすすめの食べ物)

夏の食養生の基本は、「熱を冷ます」「潤いを補う」「胃腸をいたわる」の3つです。

① 熱を冷まし、潤す「夏野菜」

自然界のルールとして、その季節に収穫される旬のものには、その時期のからだに必要な効能が備わっています。

●トマト、キュウリ、ナス、スイカなど

これらはからだにこもった余分な熱を冷まし、失われた水分(津液)を補ってくれる優秀な食材です。特にスイカは、東洋医学では「天然の白虎湯(熱を冷ます漢方薬)」と呼ばれるほど、熱中症予防に効果的です。

②「苦味(さんみ)」と「酸味(さんみ)」を取り入れる

●苦味(ゴーヤ、ピーマン、緑茶、コーヒーなど)

「心」の熱を冷まし、高ぶった神経を鎮める働きがあります。また、からだの中に溜まった余分な湿気(水分)を排出するデトックス効果もあります。

●酸味(梅干し、レモン、お酢、トマトなど)

酸っぱいものには「引き締める(収斂)」作用があります。開きっぱなしになった毛穴を引き締め、汗の出すぎを防ぐとともに、唾液や胃液の分泌を促して消化を助け、からだに潤いを与えます。

③「冷え」を防ぐための「薬味」を活用

夏野菜や冷たい飲み物はからだを冷やします。冷たいものばかりを摂ると、胃腸(脾)が冷えて消化機能がストップしてしまいます。
これを防ぐために、生姜、ネギ、シソ、ミョウガ、ニンニクといった、からだ(特に胃腸)を温める「薬味」を必ずセットで摂るようにしましょう。冷奴にネギや生姜を乗せる日本の食文化は、まさに理にかなった養生法なのです。

3. 夏のからだを整える「セルフケア」

古典『黄帝内経』には、夏の生活スタイルについて「夜臥早起(やがそうき)」「無厭於日(むえんおじつ)」と記されています。

① 睡眠:少し遅く寝て、早く起きる

夏は日が長く、夜が短い季節です。自然のサイクルに合わせて、冬よりも少しだけ夜更かしをして、朝は太陽と共に早く起きるのが良いとされています。もちろん、睡眠不足にならないようトータルの睡眠時間は確保してください。

② 究極の養生「昼寝(午睡)」のススメ

東洋医学では、1日の中で最も「心」が働く時間は午前11時〜午後1時とされています。この時間帯に15〜30分程度の短い昼寝(シエスタ)をとることで、「心」を休ませ、午後のエネルギーをチャージすることができます。横になれなくても、目を閉じてじっとしているだけで効果があります。

③ イライラしない「心の涼」を保つ

夏は「火」の季節ゆえに、怒りやイライラが爆発しやすくなります。「怒り」の感情はからだの上部に熱を昇らせ、さらなる不調を招きます。
「心静自然涼(心が静かならば、自然と涼しく感じる)」という言葉があるように、ゆったりとした呼吸を心がけ、焦らず、気持ちを穏やかに保つことが夏の重要なセルフケアです。

④ エアコン冷えには「湯船」と「足湯」

現代の夏バテの多くは、外の熱よりも「室内での冷え」が原因です。冷房でからだが冷え切ると、汗をかく機能が鈍り、体内に熱や水がこもってしまいます。
シャワーだけで済まさず、38℃〜40℃のぬるめのお湯にゆっくり浸かり、じんわりと汗をかくことで、自律神経を整え、溜まった湿邪を追い出しましょう。全身浴が難しい日は、足首まで温める「足湯」だけでも絶大な効果があります。

4. 夏の不調に効く!おすすめの「ツボ」

隙間時間に指の腹で痛気持ちいい程度の強さで、ゆっくり息を吐きながら3〜5秒ほど押すのを数回繰り返してみてください。

① 内関(ないかん):イライラ・動悸・胃のむかつき

●場所:
手首の内側のシワから、指3本分(人差し指・中指・薬指)ヒジ側に進んだところ。2本の筋の間。
●効果:
「心」を落ち着かせ、自律神経のバランスを整えるツボです。夏のストレス、不眠、乗り物酔い、冷たいものの飲み過ぎによる胃の不快感にも効果的です。

② 足三里(あしさんり):夏バテ・胃腸の疲れ・だるさ

●場所:
膝のお皿の外側のくぼみから、指4本分下にあるすねの骨の外側。
●効果:
胃腸(脾)の働きを活発にし、消化吸収を高める万能ツボ。松尾芭蕉が旅の途中にここにお灸を据えていたことでも有名です。食欲がない時や、足がだるい時に強く押すとスッキリします。

③ 陰陵泉(いんりょうせん):むくみ・からだの重さ・冷え

●場所:
スネの骨の内側を、足首から膝に向かって指で擦り上げていき、膝の内側の下で指がポチッと止まるくぼみ。
●効果:
体内に溜まった余分な「湿(水)」を排出するツボです。湿度が高くてからだが重だるい日や、冷房で足がむくんで冷えている時に非常に効果的です。

④ 湧泉(ゆうせん):疲労回復・気力アップ

●場所:
足の裏。足の指をギュッと曲げた時に、最もへこむ「人」の字の交差点の部分。
●効果:
生命力の源である「気」が泉のように湧き出るツボ。夏の暑さで体力が削られ、ぐったりと疲れ切ってしまった時に、ここを青竹踏みやゴルフボールでゴリゴリと刺激すると活力が戻ってきます。

終わりに

東洋医学の夏の養生とは、自然の暑さに抗うのではなく、そのエネルギーを上手に受け流しながら、自分の内側のバランスを保つ技術です。
「冷たいものばかり飲まない」「イライラしたら深呼吸する」「少しだけ早く起きてみる」「シャワーだけでなく湯船に浸かる」。
どれも日常のちょっとした工夫ですが、その積み重ねが夏のからだを確実に変えてくれます。ご自身の体調の声に耳を傾けながら、無理のない範囲で東洋の知恵を暮らしに取り入れ、健やかで心地よい夏をお過ごしください。

 

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