その3 ATになるために必要な資質とは
アスレティックトレーナー(AT) が関わる対象は競技スポーツのトップアスリートだけではありません。レベルに関わらず部活に精を出す学生たちや、ただ身体を動かすのが好きな一般の方々の役に立つこともできます。病院で働いていたり、芸能界で活躍するアーティストのサポートをする AT もいます。そもそも働く場所以前に、10人の AT がいればそれぞれ特色のある色を持っています。ですから、ここで述べる AT の資質は唯一絶対的なものではありません。ただ、ATを目指すのであれば、どんな自分になりたいのか、考えてみてください。
アメリカのアスレティックトレーナーのバイブル的テキストにこんな表現があります。
「アスリートの傷害予防と健康管理に携わる全てのプロフェッショナルの中で、恐らくアスレティックトレーナーほど密接に関わっているものはないであろう」
アスリートの健康管理やコンディショニングを担う専門家の中で、アスレティックトレーナーがアスリートに最も近しい存在だということは、昔も今も、そしてアメリカであれ日本であれ変わらない事実でしょう。また、「密接に」という表現には「心の奥底から」という側面もあります。AT として仕事をするためには、自分がサポートする相手に心から関わり、彼等の心からの信頼を得ることが不可欠だと受け取ることもできます。ですから AT の資質として、「信頼される存在」ということを軸に考えてみましょう。これは、どの専門家にとっても共通項目でしょうし、 AT を目指す多くの人が考えることだと思います。

信頼を得るためには、なにより AT としての専門知識や専門スキルが身についていないと話になりません。自ら学習を重ねる意識の高いアスリートの要求にも、情報収集が好きで知恵袋化した一般愛好家の要求にも、充分に応えられる存在にならなければなりません。そのためには自らを高めるために妥協を許さぬ貪欲な向上心が必要になります。
明治東洋医学院専門学校 AT専攻はその土台に鍼灸学科と柔整学科がありますので、1年生の時から基礎医学をたっぷり勉強します。身体の構造を学ぶ解剖学や、その働きを学ぶ生理学が中心になります。初めは覚えることばかりで嫌になることがあるかもしれません。ただ、ここで養う基礎力が大きくなればなるほど、その上に建つ建物も大きくなります。基礎を学ぶ大切さを知っていることもひとつの資質と言えるのです。そして、この領域については誰にも負けないものを身につけたいとコツコツ努力を積み重ねられる態度そのものが、信頼を得る上で重要になるのです。

AT にとって必要な知識やスキルは専門的なものばかりではありません。いわゆる一般教養も養っておかなければ、説得力のある存在とは言えないでしょう。スポーツ、医療、健康領域に限らず、広い見識を養うために、様々なことに興味を持ちましょう。様々な人と出会いましょう。様々な本と出会いましょう。新聞も読み、ニュースも確認してみましょう。それはきっと信頼できる豊かな人間性に繋がると思います。

専門的そして一般的な知見やスキルなど、一見バラバラに見える関係を理解し、自分の中で統合し、アスリートを始め自分が関わる人達のために現場で活用する力も必要です。そんな、考え抜き、工夫する力も向上させましょう。苦労して身につけていくことは自身を高めてくれますが、それは未来に出会う誰かのための努力でもあります。その誰かを想像し、考えながら努力を重ねることで、より豊かな想像力や創造力を育てることができるように思います。自分の力を誰かのために尽くし、信頼を得て、役に立っていると手応えを感じられたなら、本当のやりがいというものを体感できるのではないでしょうか。
実際にこれらのことを高いレベルで実践することは簡単ではありません。しかし重要なことは、そうありたいと本気で想い、そのための行動に移すことだと思います。自分の目指すビジョンを持ち、それを現実にするために前向きに取り組む。そしてそれが何より誰かの役に立つためのものなら、信頼に足る存在に近づけるはずです。これが ATに必要な基本的な資質だと考えます。

